【短編】5℃。


「rrrrrrって打ち込まれてるぞ、アホ」


吉田の声。巻き舌。私はコレが出来なくてフランス語を挫折した。


「アホで結構です。アホですから。……って、ええ?」


私は飛び起きた。モニターにはrの羅列。驚いたのはそこじゃなく。


「吉田? 吉田、なんで」
「なんでって、オフィスに帰還しちゃいけねえの?」
「いけなくないけど、だって、今夜……ちょっと何すんの?」


吉田は私の二の腕を掴み、私を立たせるとわざわざ壁に寄せた。そのまま壁に押し付けられて、身動きが取れなくなる。


「理香、俺に何か言うことは?」
「ございません」
「俺、誕生日なんですけど」
「おめでとうございます。これでオジサンへの道を一歩進みましたね」
「アホ。そういう理香もオバサンになるだろ」


ドン。吉田はもう一方の手で私の顔の脇に手を突いた。


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