こんなのズルイ。
「なんだ、おまえら、いつの間にくっついたんだ?」
「おまえには関係ない」

 コウタがタツキからかばうように私を抱きしめた。彼の腕の中で体をよじりながらタツキの方を見ると、彼がバツが悪そうに後頭部をかく。

「悪い。邪魔するつもりじゃなかったんだけど……謝りたくてさ。なんて言うか……男のくせにマリッジブルーってやつ? それで、昔のことを思い出して、ついあんなことを言っちまって」
「二度とアオイにあんなことを言うな」

 コウタに睨まれ、タツキが両手を合わせる。

「ホント、悪い。メグには本気でプロポーズしたのに、〝ファンの女の子にサインをねだられてデレデレするし、私じゃなくてもいいんでしょ〟とか言われてさ。そんな心配するなっつーの」
「有名人も大変だな」
「本当だよ」

 タツキが大げさに肩をすくめたとき、路地の入り口からメグの声が聞こえてきた。

「あれ、みんなこんなところで何してるの?」
「おー、メグが来るのを待ってたんだよ」

 タツキが背を向けてメグの方に歩いて行く。

「人騒がせな男だな」

 コウタがボソッと言って腕を解いた。
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