極妻





関西から東京にある御劔組本家の屋敷に到着したのは日が落ちた頃だった。


住んでた家ほどやないけど、十分過ぎるほど広い日本家屋と庭園がそこにはあった。


しかも東京の一等地であることを考えたら、資産価値は草薙家に勝るとも劣らない。


今まで父の付き合いで訪れた、どんな家よりも立派だった。




「はるばるよくお越しくださいました」


乗りつけた車を降りると、重厚な門のまえに、ズラズラと並んだメイドさんや執事さん達が頭をさげた。


二十人はいるなぁ。
なかには強面のいかにも……という男もいる。


けど肝心の西園寺朔夜らしき姿はない。


すると、坊主頭で背丈が190センチはありそうなおっさんが一歩まえに出た。額に大きな傷がある。


「私は舎弟頭やらしてもらってます鬼束と申します。今日からご自分の家と思って、ゆっくり羽を伸ばしてください」


まるで黒豹のような褐色の肌と目を持った男。


にこっと人のいい笑みを浮かべてはいるけど、これはこういう人間の本当の顔やない。


「ありがとう」私はそう一言だけ答えた。


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