極妻
そして今さら気づいた。
小夜子の中で、アイツはずっと生き続けるんだ。
お前は見事に小夜子の心を奪ったんだな。最初から、最期まで。
これだけは分かる。俺の敗けだ。
大倭会も跡目争いで揉めるだろ。もう終わりかもな。いいさ潰れたって知ったことじゃねー。
でもお前が残した息子は俺が守ってやるよ。だから今日引き合わせたんだろ?
「今度はなんで笑ってんの?変なおとーさん!」
ふざけて俺に凭れてくる朋夜。ここで俯いていた小夜子が顔をあげた。
「さ!早よ帰ろ!今夜はおでんや!」
「えー!?シチューが食べたーい!」
「ええやん、おでんで?兄ちゃん好きやってん」
唇を尖らせる朋夜に小夜子は笑う。
3つの影が重なって、まるで1つの生き物のように見えた。
《END》