二十年後のクリスマスイブ
「若かりし日の父の全てが、この指輪に集約されているのですね…」

 手に取って眺めていた指輪をケースに戻すと、拓真は大きく深呼吸して感想を述べた。

「でも、これだけの指輪を残しても君のお母さんと拓真君を選んだんだね、お父さんは…」

 新井が、二十年前を振り返り呟いた。

「人と云うものを一番に考える桐ちゃんらしいよね…」

 天神も、微笑ましく付け加えた。

「父は、母が生きていたら、どうするつもりだったのですかね…」

「悩みに悩んで、必ず答えを出しただろうね…君の父さんには幼い時から色々な難しい試練が待っていて、それを克服した人だからね…『待ってました!』とばかりには気軽に顔は出せないのかも知れないが必ず来るよ……万が一、来ないとしたら人生を終える覚悟も在るかも知れない……でも、それは決して運命がそれをさせないと思うよ…」

 天神が言葉を選びながら穏やかに、ゆっくりと拓真に話した。

「貴方の話し方は、父に似てる気がします…」

「それはそうだ。君の父さんを見習っているからね。教えられる事が一杯あったよ」
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