二十年後のクリスマスイブ
 表が薄暗くなるにつれ、店の中のクリスマスツリーは静かだが厳かな灯りが輝きを増していた。

「桐ちゃんらしい…全く変わっていないな、昔と…」

 拓真から今迄の事を聞き、天神は軽く溜め息を吐いた。

「実は、迎えに来たんだよ。今日は君のお父さんをね…」

「父をですか?…」

 拓真が尋ねた。

「君は見たかい?お父さんが預けている指輪を… マスター。又、拝見させて貰えないでしょうか?運命の指輪を…」

 天神が、新井に笑顔で頼んだ。

「私達よりも一番待ちくたびれているんじゃないかな…」

 新井が、そう呟きながら引き出しの奥から気を付けて指輪のケースを取り出した。

「本来なら、こういうコンパクトなのに納まる物じゃないのだが…」

 天神が置かれた地味で小さな化粧箱を眺めながら言った。

「拓真君、手に取り開けて見てごらん。判る筈だよ。お父さんの気持ちが…」

「……」

 拓真が、おそるおそる黙って化粧箱を手に取り、そっと開いた。

 指輪が今迄の鬱憤を晴らす様に眩く輝き、その存在を露わに主張した。

「若かった、お父さんの全てだと思うよ…」

 天神の解説に、拓真はそれをじっと眺め続けた。
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