二十年後のクリスマスイブ
「居るよね♪桐人…」

 玄関のチャイムがなった。

「誰だろう?…」

 抜けたような重い腰を桐人が上げようとすると、真由美の顔色が変わり桐人に確認を求めるように言葉を出した。

「私、桐人の側にずっと居て良いんだよね?…」
 真由美には、其処に誰が居るのか、ある種の勘が働いた。
「ああ…側に居るよ。」
 桐人は、そう言い残し真由美の腹を微笑みながら撫でて、玄関先へと向かった。

「はい…」

 桐人がドアを開けると思いもしなかった律子の姿が目の前に現れた時、この現実が夢の中の出来事じゃないか?と桐人の脳が又、混乱を始めた。
「元気にしてる?」

「ああ…何とか…」

 桐人が言葉に出来たのは、此処までだった。
 本当は、一杯言葉を出したかった。

「これ、クリスマスプレゼント!桐人に似合いそうな服、一杯あってこんなになっちゃった。重かったんだよ…ねぇ、入っていい?」

 久しぶりの律子の笑顔に表の冷たい外気の痛さも感覚は無かった。
 この冬空の中、会いに来てくれた律子の紙袋をすぐに持って元の愛の巣へ受け入れたかった桐人だが、律子の要求に只、天を仰ぐだけで言葉を返せなかった。
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