薬指の秘密
口に含んだミルクティの温かさとほのかな甘みにふう、と息をつく

手に伝わるじんわりとした温かさえ、今はとても心地がいい

カップを回すと渦を巻くその液体は、海斗の出張前に自分が作ったものと何ら変わらない

のに、味は違う

鼻腔をくすぐる香りもほんの少しだけ違う、ような気がする

「ねえ、海斗」

くるくるとカップを回すと鼻腔をくすぐるほのかな香り

「出張から帰ってきたらミルクティの作り方教えてくれるって約束だったよ」

視線を上げると湯気の立つカップを持った海斗

「そんなことも言ったな」

ソファには腰かけずパソコンを開く海斗の隣にするりと滑り込む

「約束だよ。教えてよ」

「…世の中には知らない方がいいことがたくさんあってだな」

「ミルクティの作り方がどうすれば知らない方がいいことになるのよ」

じっとりと睨み付ければ見下ろしてくる漆黒の瞳

流れる沈黙を破ったのは、海斗だ

「そういえば今日24日だけど」

「…え!?今日イヴ!?」

嘘!!

< 35 / 70 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop