薬指の秘密
「立花先生ー」

午後一番の外来診察を終えて最後のカルテを閉じた瞬間

待ってましたと言わんばかりに横のアコーディオンカーテンが開く

顔を出したのは飯田莉彩

「黒崎先生知りません?1番ベットの小雪ちゃんのことで相談があるんだけど」

さっきから見当たらなくて

「黒崎先生ならただいま絶賛クリスマスツリー飾りつけ中です」

「あー、相変わらずもてもてな」

気をつけなよ、小児科の子供たちは強敵よ

しるふからカルテの山を受け取りながら莉彩が冗談交じりに笑う

「それ、私も最近思ってたんだ。真の敵は彼らじゃないかと」

どう頑張っても勝てないような気がするけれど

「ひと段落ついたし、ちょっと様子見てくるから小雪ちゃんのこと伝えておくよ」

ひとしきり笑った後、椅子から立ち上がったしるふが言う

「よろしくー」



「くーろざきせんせい」

高い脚立に乗ってクリスマスツリーの上の方の飾りつけをしていた海斗が

反射的に視線を下に投げると子供たちに囲まれて立花しるふがたっていた

「よう」

数日ぶりにあったような感覚を覚えるのは自分だけだろうか
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