薬指の秘密
「違う。海斗はこういう彼氏彼女ですよって言うのが嫌いだと思ってたから」

きっと欲しいと言っても嫌そうな顔をするんじゃないかと思っていた

一瞬でも海斗の瞳にそんな光が見れたら

もう立ち直れないような気がして言い出せなかった

「束縛するのもされるのも嫌いでしょ、海斗は」

嫌なものを彼女だからって押し付けたくないじゃない

それじゃ海斗の周りをうろついている彼女たちと何も変わらない

「それこそ心外だな」

ふと見上げてくるブラウンの瞳は、一度だって彼女たちとかぶったことはないというのに

「束縛されるのもするもの嫌いだが、自分の女に他の男が寄ってきてまで黙ってるほど心無いわけじゃない」

ましてやそんな寂しそうな顔をされるなど

「だったら縄でも檻でも縛り付けられた方がまだましだ」

あるいは縛り付けている方が

ブラウンの瞳が嬉しそうに笑うのは一瞬の後

この笑顔のためなら安いプライドなど意地など捨て去ってみせる

たったそれだけでこんなにも嬉しそうに笑ってくれるのなら

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