キュンとする距離
ははははは。と、豪快に笑い去っていった背中を見てため息をつく。
だって、現実で壁ドンなんてないでしょ。
これまで22年間、彼氏なしの私には理解不能だ。
よく彼氏がいない人は理想が高いだとか、夢見がちだとか言われるけどそんなつもりは毛頭ない。
中学、高校と私に話しかけてくる男子はあのやなやつ山内しかいなかった。
社会人になったら、もちろん上司と話したりはするけど恋愛に発展なんてことはなかったし。
つまり、恋愛をする機会がなかったのだ。
「壁ドンなぁ。どこがいいんだか。」
ボソッとつぶやき、新しく淹れたコーヒーを手に職場へ戻った。