【短編】くすんだリング。
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週明け。私は有給休暇を入れた。月曜日の朝、私は出来るだけのお洒落をして、部屋を出た。
鞄の中には年賀状。課長の自宅の住所が印字されている。私はそれを入力したスマホの地図を頼りに、電車を乗り継いだ。
「ここ……」
到着したのは高級住宅街。見上げるようなマンション。心なしか、辺りを歩く人間も地位が高いように見えた。私は浮いた存在に思えた。
302号室。私はそこに向かった。階段を一段一段踏みしめて、踏みしめる度に怒りがこみ上げてしまう。福島と書かれた表札を確認して、私はインターフォンを鳴らした。
「どちらさまで……」
インターフォンから流れてきた言葉は途中でプツンと切れた。きっとカメラに映った私を見て、驚いたんだろう。アポなしの不倫相手の訪問。様子を見るけど、何の反応もない。でも、このまま帰るつもりはなかった。私はわざと大きな音を立ててドアを叩いた。