【短編】くすんだリング。
「福島さーんっ、開けてください。いらっしゃるんですよね??」
ドンドンドン、福島さーんっ、ドンドンドン、福島さーんっ。数回繰り返すとドアが少しだけ開いた。隙間からセミロングの女性が覗けた。
「迷惑です、お引き取りいただけます?」
彼女はキツい口調で言い放ち、ドアを閉めようとした。私はすかさず、つま先をドアの隙間に差し込み、閉じるのを阻止した。
「ねえ、止めてくださらない?? 人を呼びます!」
「人? 奥さんこそいいの?? ドアを開けて。さもないと写真、ここからバラまくから」
私は鞄から写真を取り出して彼女に見せた。厚みは1センチはあった、私と課長がキスをしている写真、コピー。そう、彼女が探偵を雇って撮影させた写真。私はプリンターで夜な夜なコピーを繰り返した。200枚。通路の下には駐車場、住人らしき人も数人いた。
「なっ!!」
「早く人を呼べば?」
「……」
「ドア、開けて」
彼女は観念したのか、ノブを握る手を緩めた。私は一気にドアを開いて、その、彼女の手首を掴むと、マンションの通路に引きずり出した。