【短編】くすんだリング。
「お宅の娘さんがうちの主人と不倫関係にあります、って。親御さんから別れるように説得してくださいませんか、って。楓、本当なの?」
「……」
「黙ってちゃ分からないわよ」


写真を手にして、見つめる。もう、シラは切れないと思って観念した。


「……うん」
「そう……」


母は茶を啜る。

 
「奥さん、浮気に気付いて探偵を雇ったんですって。すぐに娘さんが別れるなら裁判沙汰にはしません、慰謝料も探偵代も請求しないから、って。楓、分かったわね?? お金はどうでも、奥さんのいる人と関係するなんて駄目。すぐに別れてちょうだい」


奥さん……奥さんか。あの無言電話も空メールも。なら辻褄が合う。でも私は私の中でグラグラと煮え立ったのが分かった。こんなやり方、卑怯だ。父と母に直談判に行くなんて、酷い。


「母さん……分かった。父さんごめんなさい。すぐに別れるから」


私は出来るだけ静かに、そう言った。






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