【短編】くすんだリング。
その不審な電話は午後も数回あった。
*─*─*
翌週、課長は約束通りに来た。課長が定時に上がると、15分という時間差で私もオフィスを出る。路地裏のパーキングで課長の車に乗り、キスをする。そして私の部屋に向かう。
シャワーも浴びずにベッドになだれ込んで、コトをする。
「課長」
「ん?」
「欲しい、もっと」
「いやらしい子だね、楓は」
「そんなこと言わないで……」
「だって、そうだろう?」
1時間ほど抱き合って、課長はベッドを下りる。この2年間、飽きもせず、よく続いてると思う。
「最近……」
「最近?」
「無言電話があるの。課長が留守の時に私が電話に出ると切られちゃって」
「そうか」
「なんか、怖い」
課長は何事も無く、袖口のボタンを締める。そしてベッドに座り、
「愛してる」
と言ってキスをした。その何でもないフリに私は一つの推測をした。
その無言電話。それは……新しい女の存在。つまりは課長が二股を掛けてるんじゃないか、って。