【短編】くすんだリング。
路地裏の駐車場でキスをしている写真。そして課長が私の部屋に入る写真、出て行くところの写真だった。それもそれぞれ複数枚、焼かれた日付も違うものだった。


「母さん……?」
「これ誰なの」
「……彼氏」


咄嗟に嘘をついた。まさか上司で既婚者で、とは両親には言えない。しかし、これを一体誰が……? パニックになった頭で考える。

すると、それまで黙っていた父が口を開いた。


「嘘つけ! この人は奥さんがいるじゃろが!」
「え?」


怒鳴り始めた父に母が慌てた。父の腕を掴んで引っ張り、父さん怒鳴らないって約束でしょ、とオロオロしている。


「楓、楓はどういうつもりなんじゃ!」
「ねえ、なんでこんな写真、誰が」
「誰でもいいじゃろがっ、お前は人の旦那さんを横取りしようとしちょるんか??」
「横取り? 横取りなんてしてない」
「じゃあ、何故こんなことしてるんじゃ! 父さんはお前をこんなフシダラな娘に育てた覚えはないし、こんなことをさせるために一人暮らしをさせてるんじゃない……」


父の怒鳴り声はどんどん小さくなり、今度はすすり泣きを始めた。母は大きく溜め息をつくと、写真を封筒に戻した。


「母さん……、その写真」
「福島さんの奥さんがみえたの、うちに」


奥さん……?


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