多重人格者【完結】
よくモテたから、俺は女を提供する側。
別に無理して女を抱きたいなんて思ってない。
そんな趣味ないし。
だから、決まって俺はビデオ係。
無理矢理でなくても女は寄って来たから。


バレないように口止めの為だけのビデオ撮影。
それで今まで公に出る事がなかったんだ。

処女は特に喜ばれたから、俺もあやめはいいカモだと思っていた。


なのに。

さっきまで、顔を真っ赤にして、おどおどしていた“彼女”はここにはいない。


今、目の前にいる“そいつ”は血に狂った獣の様にも見える。


「あんた」


その場で立ち往生していると、“そいつ”が俺に近付きながらニヤっと笑う。
さっきと、完全に形勢逆転。

背筋が凍りつきそうなほど、冷たい瞳で俺を見つめた。
同い年なのに、どうしてここまで冷たい瞳が出来るのだろうか。


「…相当、悪い男だね」

そうやって、――あやめだった女―――はくくっと嘲笑った。
見た目はあやめなのにあやめではない。


「…お前、ナニモノなんだよ…」
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