多重人格者【完結】
すべて


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布団をかぶったアタシは、じっと息を潜めた。


カチャリと静かに扉が開く音がする。
誰かが中に入って来る気配がした。



それが誰かなんてわかり切ってる。


ずっと、殺したいと思ってたあの男だ。


近付くにつれて、聞こえる荒い呼吸。
はあはあと、それが自棄に耳障りで眉を顰めた。


「あやめ」


ゾクリと背中が粟立つ。


そいつはゆっくりと、布団を捲って行く。
段々と見えて来る顔。


下卑た顔で、厭らしく見下ろす最低の男。



「ああ、可愛いあやめ」



……チッと心の中で舌打ちをした。




「まさか、あやめから誘いに来てくれるなんて。
初めてだね?」



緩く微笑む顔は酷く歪んでいて、気持ち悪い。
普通にしてたら、不細工でも何でもないし、いい親父になれたものを。



――――――――お前は、死んで償え。

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