多重人格者【完結】

あやめが意識を手放したと同時に、目覚めたのは。


「……」


カンナだった。


起き上がると、まだ少し濡れた髪の毛を触る。
それから、ベッドから降りるとタンスに向かう。
引き出しを開けて、Tシャツとデニムを取り出すと着替えた。


まだ、あいつらは起きている。
静かに玄関に向かい、靴だけ取るとアタシは部屋に戻った。

それから窓を音をたてずに開けると、アタシはそこから目の前の木に飛び移る。


あやめは運動が得意ではない。
だから、まさかこの木から抜け出すだなんて、大人は露ほども疑わないだろう。


木から飛び降りた私は靴を履くと、夜の街へと繰り出した。


まだ、21時を回った辺り。
アタシぐらいの年の女がいてもいいだろうけど、一人って言うのは何かと厄介だ。

好奇の目で見る男もいる。


ただ、そんなヤツが今のアタシは欲しかった。
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