多重人格者【完結】

繁華街まで向かうと、アタシはわざと止まってガードレールに寄りかかった。


それから、数分とせずに酔っ払った親父がアタシに近寄って来た。


「お嬢ちゃん、こんな時間に一人でどうしたの?
おじさんと出かける?」

「………」


ちらっとその親父を見る。
真っ赤で脂ぎった顔をして、酒臭い息を漏らす。

……こいつでいいや。


「いいよ、おじさん。
アタシとあっちでイイ事しよ?」


にっこりと笑ってやると、おじさんは声を弾ませてアタシにくっ付いてくる。
路地裏に入ると、人が来ないのを確認してアタシは親父の方を向いた。


「ここでいい?」


コクコクと頷く親父が、ゆっくりとアタシに近付く。
そこに。


「おい、待てよ」


そう、声がした。
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