多重人格者【完結】
さっきの親父を殴ってやろうと思ったのに。
寸前で邪魔が入った。

これはアタシのただのストレス発散と、翌日荒れた手を見て、あやめが落ち込むサマを見たいだけ。


「…カンナだろうと、俺から見たらあやめだ。
だから、好きにはさせない」

「はあ?好きにはさせないってあんた馬鹿なの?」

「どうとでも言えよ。
俺はあやめを救いたいんだよ」

「……」


この男の言う事は一々アタシの癪に障る。
…同情か?

多重人格者は可哀想ってか?


まあ、少なくともアタシみたいなヤツが中にいたら幸せではないかもな。

自嘲気味に笑うと、草野を一瞥する。


「絶対に無理だ」

「わかんないだろ」

「…何?罪滅ぼし?
偽善行動して、今までの悪事は全て水に流せって?」

「……」


また黙る草野。
何も言い返せないだろうな、そりゃ。


草野のした事は、被害者にとっちゃ一生残る傷なんだ。

あやめは未遂だったから、深くは考えてないが。
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