見た目イケメン、中身キモメン
手を握り、走る。
手、すべすべじゃないか!
なにこれ、すべすべさらさら!ほどよく肉もついて、ふにふに!ああ、まずい。走ったせいか、彼女の乱れた息が耳に通る。このまま一キロぐらい走って、更に喘ぎ声ばりの息遣いを聞いてみたいけど、俺が限界。
ちっ、インドアなのが裏目に出たか。
適当なところで止まる。彼女の手から滲む汗を、俺の手で吸収するイメージ持ちながら、離す。しばらくこの手は洗わない。
大丈夫ですか?と男なら気の利いた言葉でもかければいいのだけど、息を整えながら上目遣いでこちらを見る彼女前にしては、「優しくしますから!」と間違って口を滑らしそうになるので閉じた。
去ろう。
今日は彼女の匂いに息に汗を堪能したのだから、これ以上は何も望むまい。
「た、助けてくれてありがとうございます!で、でも、お刺身が。あ!私もお刺身なんです!一緒に食べませんか!」
むしろ、あなたが租借し吐き出した刺身でも食べたい所存ですが、いいのですか!
そんなわけで、そこから、彼女との交流が始まる。
彼女は、反則だ。
反則なほど可愛い。
出会ったばかりの男を、恩人だからと一人暮らしの部屋に招く無防備さ。うっかり、彼女の部屋にあった髪の毛を持ち帰って来てしまった。代わりに俺の髪の毛を置いてきたが、無防備にありがとうございますと言うものだから、彼女はどこまでも純真無垢なのだろう。
そんな中身だから、見た目も天使。大いに納得できる。写真に撮って引き伸ばし、部屋一面に飾りたい。飾った、マーベラス。
交流を続けていく内に、俺が堪えきれなくなった。このままでは、犯罪に走る。
なので、せめて合法的にボディタッチ出来ないかと告白した。
彼女は、俺を喋れない人と思っている。
メールでの告白でも嬉しいと思うほど、重病認定している。
声で告白しようものなら、「頭のてっぺんから、足の指まで大好きです。椅子代わりでも何でもいいので、とりあえずそばにいさせて触りまくって踏みまくって、何でもいいので、とりあえずあなたの視界内にいたい!」とか言いそうなので、やめた。
結果はイエス。
しかもか、その返信が。
『どこへでも付き合います。一生、あなたのそばで、添い遂げます』
俺はその日、部屋の窓から身を投げた。
人間、喜び行き過ぎて、萌え悶えると大ジャンプしたくなるものなんだ。