サクラと密月
そんなある日、会社で事件が起こった。
例の同僚が大きな失敗をしたのだ。
以前からの態度は相変わらずで、更に磨きがかかっていた。
先輩女性社員も投げ出すほどだった。
その行動は会社の中で目立ちはじめ、毎日なにをしに来ているのかと上司達の間で
話題になるほどになってしまった。
しかし本人は一向に気にしない様子で、以前と同じ生活をしてた。
ただ彼女の本性は皆にばれて、若い男の子達も以前ほどちやほやしなくなった。
かかわらないように、でもそれがバレないように遠巻きに見ているといった感じ。
また、仕事もミスが多くて、何時しか仕事のことは殆ど蚊帳の外といった感じだった。
当然、彼女のお陰で同じグループの者は、別のグループに恨みを買う事も多かった。
当然私も火消しに回ることもあった。
けれど今回のミスは、損失があまりにも大きくて誰が責任をとるのかと言う話にまでなっていた。
毎日その話題で、誰かが一人ずつ役員に呼び出された。
そしてとうとう、私の番が来た。
昼下がりのオフィスで午後の仕事を始めようとしたその時だった。
係長が私を呼んだ。
係長の机に近寄る。
「役員が君に話があるそうだ、一緒に部屋まで行こうか。」
そう言われて役員室に向かった。
オフィスから少し離れた所にある役員室。
お茶出しではよく行ったが、まさか自分のことで行くことになるとは思わなかった。
茶色の重い扉を開けて中に入る。
先に係長が歩いてくれたので心強かった。
係長の斜め後ろで立ち止まった。
「もう少し前に出てきてくれないか、大切な話があるんだ。」
そう言われて、係長の横に並んだ。
話が始まった。