サクラと密月
「前回も申しましたが、今回の件は部の問題です。
他の部署にそう言われたからと言って
何も調べず結論を出すのは、早すぎると思います。
ぜひこちらでも、もう一度調べ直し確実な解決策を
他部署へと説明させて下さい。」
その言葉を聞いた役員はしばらく何も言わなかった。
「わかった、但ししばらくその説明が終わるまで、二人で
遅くまで残業するのは控えてもらうから。」
そう言うと役員は私達に仕事に戻る様に言った。
役員室を出ると、私は係長にお礼を言った。
「ありがとうございました。助かりました。」
部屋の前にスペースがある。
来る人は役員関係の人ばかりで人に行き来はあまりなかった。
「大丈夫だよ、新人があんな所であんなこと言われたら誰だって同様するよ。」
そう言って笑った。
「ま、仕事で何時も助けてもらったからね。優秀な人材をフォローするのも
上司の仕事です。」
そう言われて少し心が軽くなった。
「それに、あれは君に問題を出してるんじゃないよ、俺のマネジメントの能力
を試してる。」
そう言って笑った。
「さ、戻ろう。また変な噂立てられたらめんどくさい。そんな暇ない。仕事だ。」
今更ながら大人ってこういう人のこと言うんだろうなと思った。
係長の後ろをついて歩く。
「そうだ、この件が片付いたら一緒に飯でもどう。ずっと世話になってたし、
一度ゆっくり 仕事以外で話たかった。」
そう言ってこちらを振り返った。
「そうですね、、は。」
私は耳を疑った。
立ちどまり係長を見つめた。
ちょっと待った、かれの後ろから通路も窓を通して日の光が射し込む。
こういうの何とかっていうんだよね、交渉を有利に展開させるための
ポジショニング効果。
「助けてもらって、こんなこと言われたら誤解しちゃいますよ。」
そう冗談にしようとするのが精一杯の私。
お願い、笑って。
「俺は構わないよ、ま、考えておいて。ついでにお店も。」
そう言ってまた歩き出した。