サクラと密月


晴れが好き。


私がそういうと、ハルは笑った。


いつも休日の昼下がり。


私はハルと公園にいた。


時々こうして二人で公園に来る。


何もない芝生の広場に寝そべり、彼は練習。


私は読書、そして勉強。


もうすぐ社内のTOEICのテストがある。




今日の様に天気の良い日は気持ちがいい。


いつも室内にいて太陽の光など浴びれないから、一週間分充電する。



お昼になると、近くのパン屋まで歩いて行き、パンを買ってきて


一緒に食べる。


食べてると、ハルが急に話始めた。



「そういえば、俺今度から東京で演奏することができるようになったんだ。」



私はテキストを読む手を止めて、彼を見た。


「日にちはまだ決まってないんだ、でも近々あるよ。」


ハルは少し嬉しそうだ。



私は少し不安になった。



なんでもっと早く言ってくれないんだろう。


でもそんな気持ち、なんだか知られたくなかった。


早く教えてくれなかったから、少し意地悪してやる。


「そうなんだ、良かったね、おめでとう。」


それだけ言うと、目線をテキストに戻した。


ハルはしばらく何も言わなかった。


あれ。


「愛果焼きもちやいてるでしょ。」


そう、にやけた声で私に言葉を投げてきた。


くっそ、ばれてる。


おまけに凄く嬉しそう、いや、楽しそうだ。


負けるか。テキストを閉じて反撃開始。


「まさか、私今度の試験すごく大事なの。」


そしてハルの正面に座りなおす。


「ハルおめでとう、良かったね。」


にっこりスマイル。


 そしてまた、テキストを広げた。


「なんだ、俺焼きもち焼いてほしくてワザと内緒にしてたのに。」


そう言って私に背を向けた。


なにそれ、ワザとだったの。


もう一度テキストを閉じて座り直した。


「ちょっと、なにそれ。どういう意味。」


そう言って彼の瞳をのぞき込む。


そこには、いつものあのいたずら好きのハルの、やってやりました的な


私を瞳が待っていたのだった。


そして私を正面から見ると、また笑い出した。



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