サクラと密月
三越を道路をはさんで左側に見ながら進む。
次の信号で左に曲がればすぐた。
大学の看板が掲げられたスペースに出る。
時々路上ライブをやってたりする。
今日も誰かやっていた。
信号待ちの間、耳を傾けた。
あれ、この曲、和彦が歌っていた曲じゃないかな?
アコギと小さなドラム、そしてボーカル。
確かめたくて足を止める。
やっぱりそうだ。
この曲だ。
曲の詩に耳を澄ます。
演奏とても上手いんだけど、本物?
カラオケにあるんだから、有名な曲だよね。
何人かが同じ様に足を止めて聞いていた。
そういえばこの曲の元の歌は聞いたことない。
ただ、曲を聞いているとあの夜のことを鮮明に思いだす。
欠けた月。
風にひらひらと舞う花びら。
そして彼の強い腕。
息もできないほどのあの瞬間が甦ってきた。
今この瞬間に。
駄目だ、駄目。
そんな自分を振り払う様に歩きだす。
夢中で歩いて本屋に入る。
冷静さを取り戻すのに本屋をぐるぐる歩きまわる。
疲れては立ち止まり、また歩く。
なにしてるのかな、私。
何が欲しくて歩いてるのかな。
立ち止まり、携帯を確認する。
恵介からの連絡はなかった。
そうだよね。あるわけないか。