サクラと密月
「何処に行ったんですか?」
少し焼きもちも入っている自分の気持ちに驚く。
自分の彼氏でもないのに。
「色々。あんまり行き先を決めないんです。今日と一緒ですね。
海行こうかな?とか、夜なら夜景を見るために山に行ったり。」
「でも、なんかそれが楽しくて。だから今、久しぶりにドキドキしてます。」
そう言って笑った。
男の子って、そんなことするんだ。なんか嬉しいな。
素直にそう思った。
女の子のドライブは行き先が先に決まっている。
大抵は郊外のレストランや雑貨屋さん。
何日も前から下調べをする。
夜なら尚更、そんな行き当たりばったりなドライブ怖くていけない。
今更ながら男の子って、ズルい。
だって羨ましいほど自由だ。
なんだか少し悔しい。
だって今、凄く楽しい。
行き先決めないなんて、本当にドキドキする。
こんなに楽しいこと知らなかったなんて。素直にそう話した。
「本当ですね、凄く楽しい。」
「良かった、無理に誘ったんじゃないかって心配してた。」そう言ってため息をついた。
安堵のため息だ。
それがまた笑いを誘う。
和彦はそうだ、いつも人のことを気にかけてくれる。
多分色んな人にそうなんだろうけど。
今の私には、そんな優しさが凄く嬉しい。
だからとても居心地が良いのだ。
変な気遣いをしなくてすむ。