サクラと密月
次の日俺は初めて会社を休んだ。
熱が38度あることにした。
いつもより少し遅く起きて軽く朝食をとる。
ワイドショーが芸能人の噂話を放送していた。
よく知らない人物だったので、TVを消した。
音楽を聴きながら出掛ける支度をゆっくりした。
髪を整え、髭を剃り、長袖のTシャツに腕を通す。
用意が整うと靴を履き、家をでた。
駅に向かい、電車に乗った。
いつもと反対のホームから電車乗る。
時間になると電車はゆっくりと動きだした。
平日の電車の中は乗客もまばらだった。
俺は耳にイヤホンをして音楽を聴いた。
吊革にぶら下がり、車窓から外を眺めた。
穏やかな秋の日だった。
目を閉じ、目的地に着くまで何も考えず、ただ電車に揺れていた。
時々年配の二人ずれの女性のたわいのない話が耳に入ってきた。
なんだかそれも心地よかった。