サクラと密月
小春日和



 目が覚めたとき一番に考えることが1つできた。


  彼女のことだ。


昨日の朝と全く同じような朝なのに、それだけでこんなに毎朝が違うなんて、自分でも


初めての経験だった。



 窓からの光が射し込むベッドの上、まどろみの中で彼女を思う。


もう起きたかな。何を思っているのかな。


 そう思うだけで、優しい気持ちになっている自分に気づく。


 寝返りをうち、昨夜のことを思い出す。



 彼女と二人で過ごした初めての夜。

 

 ドライブをして夜の海を二人で見た。


 遠くに街の光が見える夜の海。


 潮の香が頭の中に蘇る。



 そして抱きしめた時の、彼女の髪の香り。


 その柔らかなその感触が、俺の中から離れない。


 初めて心の底から愛しいと思えた。



 こんなこと思うのは大袈裟かな。



 まだ始まってもいないのに、なにやってんだか。



 自分で自分に呆れて自分をあざ笑う。


 なのにちっともそれが嫌じゃない。


 相当重症ということかな。



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