「私は貴方のモノ」【完結】
初めて感じる、この感情に俺は戸惑いを隠せなかった。


一度、視線を伏せる。


タエは俺から離れる気はない、そういう事か?


てっきり、俺の元から逃げ出したいんだと思ってた。
抱かれる度に泣きそうな顔を見せるし。



タエがそう言うなら。


俺だって手放すつもりは一切ない。


まだこっちをじっと見つめていたタエに、視線を戻すと俺はゆっくりと立ち上がる。
それから、タエを抱き上げて寝室へと向かった。


タエは突然の事で目をぱちぱちとさせている。



静かに、慎重に。
そっとタエをベッドへと下ろす。


沈むタエの上に覆い被さると、俺はその体を腕の中に収めた。


タエの小さな体は俺の腕の中に素直に収まって。



どちらともなく、視線を絡め合わせた俺とタエ。



その、唇にそっと唇を重ねる。



ただ、俺を受け入れるタエにどこか冷え切っていたモノが溶けて行く様に感じた。
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