潰れたリップクリーム。


「巧先輩」


「ん?」


「あの時、リップクリーム投げちゃってごめんなさい」


「あぁ…これのこと?」



先輩がブレザーから取り出したのはあの時、先輩の顔面に投げたリップクリーム。



「会ったら返そうと思ってずっと持ってたんだ。

まぁ、あの時蓋外れたから使えないと思うけど、一応凜の物だしね」



はい、と先輩が机の上に置いた。


置かれたリップクリームに手に取って蓋を開けると、予想した通り中はグチャグチャになっていた。


「うわぁ…グチャグチャだな」


「…これ覚えてる?」


「俺があげたやつだろ?」


「…うん」


化粧をして垢抜ける周りの子を見て焦った自分も化粧をしようと思ったあたしに巧先輩がこのリップクリームを買ってきてくれた。



『化粧なんて今しなくてもいいよ。

凜は凜だろ?焦るなよ。

ほら、凜はこれで充分だから』




あの言葉が本当に嬉しくて、

リップクリームと言葉が宝物になった。


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