再会は最高の媚薬
いくらか緊張感も解れたのでサワーや料理に手をつけることができた。
会話もみんなで盛り上がり、やっぱり学生時代の友達って特別なんだなって感じて。何度か聡史と視線が合っても、私も自然に笑顔になれて楽しむことができた。
みんな聡史と私のことについて一切触れずに盛り上がってくれていることが嬉しかった。私達のことを知っているはずだけど、それが彼らの無言の優しさなんだと思う。

そしてみんなの話に耳を傾けていると、携帯のコール音が聞こえた。バッグの中から取り出して見ると、職場であるカフェの店長からだった。
「ちょっとごめんね」と伝えながら席をはずし、入り口の方へ移動して電話に出た。
発注の確認とシフトの変更の連絡だったので、すぐに席へ戻ると聡史の姿だけがない。トイレかな?と思い、またみんなとの会話に混ざってサワーを飲んだ。
そして田中くんと話していると、そこへ割り込む声が聞こえた。

「翔太、悪いけど席替わって」

田中くんにそう言ったのは聡史。
その言葉に田中くんはビックリした顔をしたけど、「いいよ」と答えて席を立った。
私はそのやり取りを呆然と見ていたけど、席に座った聡史に話しかけられてすぐに意識を戻す。

「元気そうだな」

「うん、何とかね」

答えながら鼓動が早くなるのを感じる。
話しかけてくれた聡史の声のトーンも優しくて、何だか恥ずかしくなる。

「今もカフェで働いているの?」

「そうだよ。今はコーヒー淹れたり、パフェ作ったりできるようになったよ」

「へ~。働き始めた時は、ドリンク運べばこぼしたり、オーダー間違えて怒られたって落ち込んでいたのにな」

そう言われて驚いた。そんな私の失敗や愚痴を覚えていてくれたなんて。私が話していてもあまりリアクションがなかったから、興味がないのかと落ち込んだりしていたのに。何だか不思議な気持ちになった。
でも失敗ばかり記憶されているのも微妙なので、ほんの少し言い返す。

「私だって成長するの!」

口を膨らませて怒った顔を見せたら、以外にも「そうだな、奈緒も頑張ったんだな」と言ってくれた。
何だか2年前付き合っていた頃の聡史と違いすぎて驚いてしまう。
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