再会は最高の媚薬
「聡史、今更だけどあの時ひどいこと言ってごめんね」

「うん?」

私のいきなりの謝罪に、聡史は首を傾げた。

「別れる時・・」

言い辛そうに言いかけた私の言葉を理解してくれたようで、クスッと笑いながら「いいよ」と言ってくれた。

「でも私、自分の気持ちばかりで聡史のことまで考えてなかった」

「俺のこと?」

「うん。自分の気持ちばかり押し付けていたよね。それなのに私ばかりが聡史を好きなんだよとか、聡史と一緒にいると悲しくなるとかひどいこと言っちゃったことずっと謝りたかったの。ごめんね」

あの時の自分の姿を思い出して頭を下げる。
すると下げていた頭を優しく撫でられた。

「そう思わせたのは俺だろ?」

その言葉に顔を上げる。目と目が合って離せない。

「奈緒を不安にさせた俺のせいだよ。お前を好きだって気持ちをちゃんと表現しなかったから、あの言葉を言わせちゃったんだよ。ごめんな」

予想外のことを言われて胸がいっぱいになる。そんなことを聡史が思っていたなんて。

あの時聡史は私を好きでいてくれた。なのに私が聡史を信じていなかったんだ・・。

「違う・・私のせいだよ」

そう言うとその後の言葉はなく、お互いを見つめ合った。
嬉しさと後悔で涙がこぼれそうになる。それを堪えようと唇が小さく震える。
『ダメだ・・このままここにいたら聡史のことが忘れられなくなる』と焦りその場の空気を破るように笑顔を作ってモヒートを飲みほした。

「ごめん、私酔ったみたいだし帰るね」

「送るよ」

そう言う聡史を手で制して立ち上がり、「またね」と言い残して足早に店を出た。



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