私、立候補します!
しかも完全にもとに戻るには心も体も通じ合う相手を見つけないといけないらしい。
「初代国王のことを好きだった魔女が嫉妬して腹いせに未完成な魔術を使ったそうでね。結果魔術は失敗。魔女本人でも魔術は解けなくて、未だにその呪いは続いてるんだ」
「異性の姿になった状態で未来の奥様を探すのは大変そうですね……」
女性からしたら同性の人に結婚してくれと言われるようなものだ。
どちら側の人にしても大変だと同情せざるをえない。
(一時的でも戻れるのはいいけど、夜間のみでしかも日没直後に月が出ていないと無効になるなんて不憫すぎる)
昼間は職務があるだろうから夜に相手を探すのも難しいだろう。
ふと、そこでエレナは今回の募集内容を思い出して首を傾げた。
「あの、それではどうしてこの度募集を行ったのですか?」
(そういう事情なら話し相手募集というのは話がずれているような……)
「私も王太子として妻がいてもおかしくない年齢だからね……。今回の募集は私の将来を心配した父が独断で決めたことなんだ」
数人の令嬢が私の城を訪ねて来たことで初めて知ったと言うラディアントの言葉を聞きながら、エレナは血の気がひいていくのを感じる。
「それでは募集したのはただの話し相手じゃなくて――」
「あなたが王太子妃候補、ということになるのかな」
(レオナルド様に頼まれて、母様のためだとしても早まったのかもしれない……)
首を傾げて目を細めるラディアントを見ながら、エレナはもう一度気を失いたい気持ちになった。
そして、あることを思い出す。
「言いにくいのですが私は止めたほうがいいかと……」
「どうして? まだ出会ったばかりなのに分からないんじゃないかな」
「いえ、そうではなく、私結構な雨女なんです」
「え……っ」
ぴしり。初めてラディアントの笑顔がひきつったものに変わる。
その様子を恐々と見ながら、エレナは自分が向かう先は雨が降ったり曇ったりが多いのだと話した。
「幼い時から変わらないので、私がここにいたらよくて曇りの日が増えるかと……」