私、立候補します!
強い口調で言い返したエレナはアレクセイの姿をする人物を両手で突き飛ばした。
――すると、彼はうつむいた姿勢で体を小刻みに震わせ、笑いながら顔を上げていく。
青い目がいっそう輝いてエレナを睨み見る。
「何故目の違いが分かる? お前達には分からぬようにしたはず――まあいい。残念だが体はアレクセイという子供に間違いはない。意識は我に捕らわれているがな」
「そんな……っ」
「どうする? 我を殺せば子供も一緒に死ぬぞ?」
口調を変えたアレクセイがくっくと笑って体を揺らす。
ニールは気を失い、エレナの唯一の武器であるロッドもない。しかし、目の前の人物から何の策もなく逃げることも叶わない。
どうしたらいいのか判断に迷ったエレナは彼から一瞬意識をそらしてしまい、そのわずかな瞬間を相手は見逃さない。
目を細め、再び氷の剣を瞬時に出現させて右手に持ち振り上げる。
――斬られる。そう覚悟したエレナは目をきつく閉じ、顔を腕で庇って迫りくる死の気配に体を震わせた。
***
(……え……?)
感じない痛みと静寂に響く何かがぶつかりあった音にエレナは恐る恐る目を開けた。
目の前に広がる背中に、まるでしばらく会えなかった人に会えた嬉しさがこみ上げて彼の名を呼ぶ。
呼ばれた男性であるラディアントは前を向いたまま口を開いた。
「遅くなってすまなかったね」
「いいえ。ご無事で何よりです!」
ラディアントはアレクセイと剣を交えたまま眉を寄せて険しい表情を浮かべる。
――階下から聞こえる騒ぎに隣の部屋にいたチェインと共に廊下を歩き出し、廊下に複数の兵士がいたために何があったのかと聞いたのが始まりだった。
兵士達はうつろな目をラディアント達に向けるやいなや突如として襲いかかってくる。
ニールの部下に無闇に魔術で対応するわけにはいかず、ラディアントはやむを得ず体術で気絶させていく。
チェインも時折苦戦しながらも体術で兵士を気絶させていった。
兵士の人数が多かったことで駆けつけるまでに時間をだいぶロスしてしまったのだった。
(しかし何故アレクセイが……?)
いつもの笑顔は微塵もなく、交えた剣にかけてくる力は子供が出せる物とは考えられない。