遊川さんは今日も最強

「……遊川さん」

「なに? 網目」


遊川さんの声は落ち着いている。下から俺を見上げる瞳は、吸い込まれそうに深い。


「好きです」


ついに言った。

声に出したら一気に体中の熱が顔に集まる。
心臓もうるさいし、変な汗やら唾やらが溜まってくる。

対する遊川さんは平静な顔を崩さない。

もうちょっと動揺とかして欲しい。
予定調和かよ、俺の告白は。


「……うん」


うんって。
いやいやいや、もうちょっとなんか反応くださいよ。


「遊川さ……へ、返事を」

「なんでどもるのよ」


突っ込み入ったー!


「すいません。でも」

「ったく。この状況で真っ正直に告白とか。……網目らしいよね」


手を伸ばした彼女は、細い腕を俺の首に回し、力一杯引き寄せる。
そして、くるりと体を反転させ、俺の上にまたがった。


「床ドンってこうやるのよ」

「ちょ、遊川さん」


俺の顔の先に肘をついた彼女は、体全身を俺に押し付ける。

胸当たってるし。頼むからそんなグイグイ来ないで。
俺の我慢が臨界点に突入しそうです


「後輩食うとか、編集長に知れたら怒られそうだけどね」

「え?」


クスリと笑った彼女が俺を見下ろす。


「キスなんて誰にでもするわけじゃないでしょ。言わなくてもわかりなよ」

「それって……」


言い終わる前に再び塞がれる俺の唇。

離れた直後、目を伏せたまま頬を染めて彼女は言う。


「好きに決まってるでしょ」


キューピットの矢で射抜かれたみたいに、俺は体中がしびれて動けない。

朝も夜も昼も。
俺にとってはいつだって、遊川さんは最強だ。





【Fin.】


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