でも、好きなんです。
「係長、かなり酔ってるなあ、ごめんな、恐い思いしたよな。」

「大丈夫・・・です。」

私がもう一度言うと、課長はつらそうな顔になった。

「大丈夫、って、無理に言わなくてもいいんだよ。恐かったって、言って大丈夫だよ、河本さん。」

そう言って、課長が軽く私の肩に手を触れた。

皆からは見えないように、本当に、そっと。

触れたときの課長は、すごく優しい目で私を見つめてくれて、触れた後、少し気まずそうな、恥ずかしそうな顔になった。

少しもいやらしい感じではなくて、とても優しい触れかただった。

初めて見る課長の顔だった。

一瞬嬉しくて、でもその後、すごく恥ずかしくなって、私は思わず顔を伏せた。課長の顔が見れなかった。

私が意識しすぎ?でも今、確かに、課長は照れたような顔をしてた。

「ああ、なんだか皆、酔ってるな、ほんと。」

そう言って、なにかを取り繕うように、課長が笑った。

しばらくして、幹事の窪田さんが、お開きの声をあげた。

課長に肩を触れられてからはずっと、肩が熱くて、なにを話していても、上の空な私だった。
< 13 / 70 >

この作品をシェア

pagetop