焼けぼっくいに火をつけて
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掻い摘んで話したつもりだったけど、随分時間を使ってしまい、昼休憩の時間も終わりに近づいていた。
「ハハハハハハッ!」
わたしの長い話を聞き終えた田岡先生は、何故か爆笑している。
「笑うような話はしてませんけど」
「だっておかしすぎる。そんな少女マンガみたいなことを、えりりんがしてたなんて」
「笑すぎですよ、田岡先生。愛理ちゃんは真剣だったんですから」
「普段のえりりんから想像できないでしょ。彼氏と10年も付き合ってて純愛してるのかと思ったら、ドローッとした過去があるなんてさ」
ヒーヒーいいながら笑う田岡先生から目を逸らした。
「その10年付き合ってる彼氏とは破局寸前でしょ?そこに過去に愛した男が登場なんて、やっすーいドラマみたいじゃない?金曜日にえりりんと奥村さんが消えてからのこと、みんな心配してたんだから。奥村さんは同期でも年上だから聞きにくいってさ」
「・・・・・・面白がってるだけですよね?」
「そんなことないわよ。ねぇ〜」
「少なくとも、わたしは愛理ちゃんのことを心配してたわよ」
「送ってくれただけです」
いつの間にか運ばれていたデザートのケーキに、グサリとフォークを刺した。
「はぁ、まるで共食いだわ」
フォークに突き刺したモンブランの栗を見つめて、ため息をついた。
「何、共食いって?」
「あの、『焼けぼっくりに火がつく』っていうじゃないですか」
「くり・・・・・・?」
「うん、だから共食い」
「それを言うなら、『焼けぼっくい』でしょ!」
「え、嘘っ!?」
慌ててスマホを取り出して検索していると、何故か川井さんまでスマホを操作している。
『一度焼けた杭は火がつきやすいところから、以前に関係のあった者どうしが、再びもとの関係に戻ることのたとえ。主に男女関係についていう。
[補説]「焼けぼっくりに火が付く」とするのは誤り。』
(デジタル大辞泉より)
「今日のえりりんは、ホントに笑わせてくれるわ」
「・・・・・・ちょっとした言い間違いです」
「それで、よく教師を目指してたわね」
「うううっ・・・・・・」
「・・・・・・『以前に関係のあった者どうしが、再びもとの関係に戻る』ってことは、愛理ちゃんと奥村さんは何かあったってことよね?」
再びヒーヒー泣き笑いしてた田岡先生と、項垂れて呻いていたわたしの声が、同時に止まった。
以前関係があった
もとの関係に戻る・・・・・・
もしかして、わたし、墓穴掘った?
「あったのね!焼きぼっくいってことは、何かあったのね」
「何にも、ないです」
「嘘だね。ホントに何にもなかったら、もっと否定するでしょ。えりりんって分かりやすいわ」
図星なだけに、何も言えない。下手に反論するよりは、黙っている方が得策だろう。ニヤニヤしている田岡先生から目を逸らした。
「焼けぼっくいはひとまず置いておいて。現実問題として、愛理ちゃんどうするの?破局寸前とはいえ、まだ彼氏と別れてないんでしょ」
「それは・・・・・・」
川井さんの言うとおりだ。わたしはまだ北見くんと別れていない。北見くんとは修復できないくらい拗れてしまってるけど、今の状態はわたしが浮気をしていることになる。奥村先生との再会に、浮かれていたわけじゃない。ただ、嫌なことから目を逸らして、現実逃避していただけだ。
自分に嫌気がさす。
わたしの表情が強張っているのが分かったのか、田岡先生と川井さんは、それ以上何も言わなかった。
掻い摘んで話したつもりだったけど、随分時間を使ってしまい、昼休憩の時間も終わりに近づいていた。
「ハハハハハハッ!」
わたしの長い話を聞き終えた田岡先生は、何故か爆笑している。
「笑うような話はしてませんけど」
「だっておかしすぎる。そんな少女マンガみたいなことを、えりりんがしてたなんて」
「笑すぎですよ、田岡先生。愛理ちゃんは真剣だったんですから」
「普段のえりりんから想像できないでしょ。彼氏と10年も付き合ってて純愛してるのかと思ったら、ドローッとした過去があるなんてさ」
ヒーヒーいいながら笑う田岡先生から目を逸らした。
「その10年付き合ってる彼氏とは破局寸前でしょ?そこに過去に愛した男が登場なんて、やっすーいドラマみたいじゃない?金曜日にえりりんと奥村さんが消えてからのこと、みんな心配してたんだから。奥村さんは同期でも年上だから聞きにくいってさ」
「・・・・・・面白がってるだけですよね?」
「そんなことないわよ。ねぇ〜」
「少なくとも、わたしは愛理ちゃんのことを心配してたわよ」
「送ってくれただけです」
いつの間にか運ばれていたデザートのケーキに、グサリとフォークを刺した。
「はぁ、まるで共食いだわ」
フォークに突き刺したモンブランの栗を見つめて、ため息をついた。
「何、共食いって?」
「あの、『焼けぼっくりに火がつく』っていうじゃないですか」
「くり・・・・・・?」
「うん、だから共食い」
「それを言うなら、『焼けぼっくい』でしょ!」
「え、嘘っ!?」
慌ててスマホを取り出して検索していると、何故か川井さんまでスマホを操作している。
『一度焼けた杭は火がつきやすいところから、以前に関係のあった者どうしが、再びもとの関係に戻ることのたとえ。主に男女関係についていう。
[補説]「焼けぼっくりに火が付く」とするのは誤り。』
(デジタル大辞泉より)
「今日のえりりんは、ホントに笑わせてくれるわ」
「・・・・・・ちょっとした言い間違いです」
「それで、よく教師を目指してたわね」
「うううっ・・・・・・」
「・・・・・・『以前に関係のあった者どうしが、再びもとの関係に戻る』ってことは、愛理ちゃんと奥村さんは何かあったってことよね?」
再びヒーヒー泣き笑いしてた田岡先生と、項垂れて呻いていたわたしの声が、同時に止まった。
以前関係があった
もとの関係に戻る・・・・・・
もしかして、わたし、墓穴掘った?
「あったのね!焼きぼっくいってことは、何かあったのね」
「何にも、ないです」
「嘘だね。ホントに何にもなかったら、もっと否定するでしょ。えりりんって分かりやすいわ」
図星なだけに、何も言えない。下手に反論するよりは、黙っている方が得策だろう。ニヤニヤしている田岡先生から目を逸らした。
「焼けぼっくいはひとまず置いておいて。現実問題として、愛理ちゃんどうするの?破局寸前とはいえ、まだ彼氏と別れてないんでしょ」
「それは・・・・・・」
川井さんの言うとおりだ。わたしはまだ北見くんと別れていない。北見くんとは修復できないくらい拗れてしまってるけど、今の状態はわたしが浮気をしていることになる。奥村先生との再会に、浮かれていたわけじゃない。ただ、嫌なことから目を逸らして、現実逃避していただけだ。
自分に嫌気がさす。
わたしの表情が強張っているのが分かったのか、田岡先生と川井さんは、それ以上何も言わなかった。