誘わないで
「何よ、あいつ……」
苛立ちと無駄に騒ぐ鼓動に挟まれて、悶々とする気持ちが破裂しそうになった瞬間──
「──あ、そうだ」
「うひゃっ!?」
急に戻って来た晃にびっくりして、変な声が出てしまった。
「な、何っ?」
「さっきのお茶、薄かったよ」
「……!?」
「お茶入れる練習しておいた方が良いんじゃない? 茉莉"さん"」
「余計なお世話だ!」
茉莉は恥ずかしさに耐え切れず、熱が集まる顔をパタパタと手で扇ぐ。
「さっさと上に戻れっ!」
負け惜しみでしかないのは、茉莉自身理解している。
それでも悪態をつきたくなるのは……。
「……はぁ、誰かに見られてたら何て言い訳しよう」
未だ熱の篭る頰に触れて、大きな溜息を吐く。
中々収まらない鼓動の意味を考えたくなくて。
茉莉はタンブラーを引っ掴んで、足早に給湯室から出て行った。
fin

