誘わないで
「俺のこと、避けてない?」
茉莉の方へと向き直った晃が彼女へと近付く度、茉莉もまた下がる。
けれど、ここは狭い給湯室。
もう一歩、と、茉莉が足を動かすと踵が棚にぶつかってしまった。
「何それ、自意識過剰なんじゃないの?」
「そう言うなら、俺の目を見て話せよ!」
「……ッ!?」
ぐっ、と近付いてきた晃の両手が、ばん、と棚を叩いた。
スーツを着た長い両腕に挟まれて身動きが出来ない。
年下の、しかも幼馴染みにこんな事をされて、ドキドキと騒ぐ胸が恨めしい。
そんな思いを堪えて茉莉が彼を睨み上げると、余裕たっぷりの笑みで晃は茉莉の耳元に唇を寄せた。
「仕事終わるの待ってるから」
晃は静かに告げると、今までの事が無かったような、女子社員達が色めき立つすっきりとした表情に戻り、ひらひらと手を振って給湯室を出て行った。