キスしなかったのは……
「キス……してくれなかった」




そう。

甘く全身を隅々まで滑らせたその唇は1度もあたしの唇には重ならなかった。




「……それか」



頭をあたしの肩に預けるように項垂れた課長は、深いため息を漏らした。







「ごめん、俺のミス。

キスしなかったのは、咲良がそれに気づいたとき、もっと俺を求めてくれると思って」




ハハハと自虐的に笑った課長の顔がスッと変わる。




「不安になる余裕なんて無くなるくらいにしてやる」



挑戦的な視線を向けるその瞳の奥にあたしを欲する光が見えた。




その瞳に返す言葉が見つからなくて、コクンと頷くだけで答えた。





「咲良……このままお前をここに閉じ込めておきたいよ」
< 14 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop