キスしなかったのは……
涙混じりで、最後の方の言葉は聞き取れなかったかもしれない。



でも、課長に誤解されたままは嫌だった。






「俺……だから?」




目を見開いた課長が呟いた。




「そうです」


「じゃあ、何故黙って帰った?一夜の遊びにしたかったのは、お前の方じゃないのか?」




咎めるような口調。



「だって……あの……」



確かに課長はあたしを、これ以上ないくらい丁寧に優しく抱いてくれた。



もしかしたらあたしを好きなんじゃないかって淡い期待をしてしまうほど甘かった。




だけど、たったひとつ……そんな期待を打ち消すには十分な理由があったのだ。





「1度も……」


「1度も?」
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