キスしなかったのは……
なのに、言い訳むなしく、私に触れていた手は離れていく。






「もう戻りな。俺も戻るから」




そう言い残して去っていく背中。







──弄んでるのは課長の方でしょ。





そう叫んでやりたいのに、ジワリと熱くなる目頭から流れ落ちそうな涙を堪えるのに必死で、声が出ない。




遠ざかっていく背中をただ見つめながら






あの夜の蕩けるように甘かった課長はもう二度とあたしの前には現れないと予感した。






あれはきっと今みたいな、課長のイタズラ心だったのだ。





そう考えただけで、崩れ落ちるような絶望感に襲われる。







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