キスしなかったのは……
あの夜──





課長と二人だけになってしまったオフィス。





自分のミスを挽回すべく伝票とにらめっこをしていて、他の人達が帰ったことにも気付かずにいたあたしに、課長が声をかけてくれたんだ。





「メシ行くぞ」





課長が誘ってくれるなんて珍しいと思ったのと同時に、憧れの課長と食事に行けると舞い上がったのは事実。





年功序列のわが社で、異例なスピード出世を果たした課長は、容姿端麗、頭脳明晰、部下からの信頼も厚い。非の打ち所のない人物だ。





そんな課長を、世の中の女性から放っておくわけもない。






そんな課長なのに、浮いた話がひとつもなくて、女性とはいつも一線おいた距離を保っている。




課長から女性社員が誘わたなんて話を聞いたことない。





だから、単純に嬉しかった。





< 5 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop