素直になりたくて~メイクに恋してあなたを愛す~
「……凄くなんかないよ」





翔也さんの顔を見ればどこか哀しそうに見えた。
冷たく吐かれた言葉とは裏腹にすぐにいつもの笑顔を浮かべると私の手に化粧品をのせる。





「これ……ちゃんと使ってあげて。
君にならそれが出来る。でも俺には……」



翔也さんの言葉は最後まで言われることはなかった。
再び悲しそうに笑う彼に私は何もできず、ただ翔也さんを見つめる。





「翔也さん……?」




やっとの想いで出た言葉は彼の名前だった。
それを聞いた翔也さんはハッとした様に私の背中を押す。




「時間大丈夫?
早くいかないと遅れちゃうよ」


「え……」




促されるように時計を見れば約束の時間を30分切っていた。
ここから15分掛かるし……急がなきゃ!!




「翔也さん!ありがとうございました!!」

「……頑張ってね」

「……はい」




笑顔を浮かべて私はメイクサロンを後にした。


彼の悲しそうな顔がきになりつつ……。
私は橘部長との待ち合わせ場所に急ぐ。


< 185 / 374 >

この作品をシェア

pagetop