また、きみの隣で
リンと初めて話したのは、高2の春、高校の図書室でだった。
高2女子の平均身長より5センチほど低いあたし。
目的の本を見つけたは良いものの、棚の1番上に置いてあったそれを取れずに苦戦していたら。
ーー「はい、豊島さん。これで良いですか?」
あたしより頭1つ分以上高い背。長い手でいともカンタンにひょいと本を取り出すと、あたしの目の前に差し出してくれた。
…まだ、クラス替えして数日しか経っていないのに…。
あたし、豊島千歳(としま ちとせ)の名字を覚えてくれていた事に驚いたけれど、すぐに嬉しさに変わる。
「あ…、ありがとうございます、糸崎くん」
「え、俺の名字覚えててくれた? どういたしまして、おチビさん」
少しいたずら顔。きゅっと上がった口角。
これが、あたしとリンの出会いだった。