キスよりも熱いもの

 いつもの調子を取り戻して、私は手を振りながら彼に背を向けた。
 けれど肩にかかった手に歩みを止められる。さっきとは逆に、腕を掴んで引き寄せられた。


「やり逃げはないだろ」


 今度は首の後に手を添えられてゆっくりと唇を重ねられる。


 角度を変え、息を継ぎながら口づけを繰り返す。唇の間から割り込んでくる舌がさっきよりも熱かった。
 段々とその勢いが増してきて、口内から全てを吸い上げられそうになる。
 悔しいけれど、上手い。


 さっきよりもさらに長く激しい交戦の後、ようやく唇を離した。唾液が一筋、キラリと光って糸を引く。
 いつの間にかお互い肩で息をしている。


「ちょっと、長過ぎ……」


「知るか」


 今度は噛み付くように、ただし触れるだけのキス。


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