キスよりも熱いもの
ほら。
クールに見える男にだって熱い所はある。
「俺が先に戻る。その顔何とかしろよ」
私から離れた椎名が親指を唇を拭いながら言う。乱れた呼吸も落ち着いてもういつものクールな表情に戻っている。
私の方はと言えば自分じゃどんな顔をしてるかなんて分からない。けれど人前に出られる顔じゃない事は潤んだ視界と頬の熱さでわかる。
倍返しどころじゃない。蕩かされたのは私の方だ。
それでもその行動を引き出したのは私のキスがきっかけだったのは間違いない。
負けず嫌いで皮肉屋で何考えてるか分からなくて冷たい。けれどそんな椎名の激情を引き出すのがいつも私であればいい。
店の方は歩き去る背中を眼で追いながらそう思った。
多分まだまだ時間はかかりそうだけれど。
fin.
