悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
「え……」


一瞬で、柳が手取り足取りギターを教えてくれるシーンを想像してしまい。

不覚にもドキンと心臓が音を立てた。

すると、彼の口角がイタズラっぽく上がる。


「手を傷付けたら可哀相だから、リカちゃんや藤沢には教えらんねーけど、ひよこならいいわ」

「……どーいう意味よそれは」


けけけ、と笑う柳にふくれっつらをするあたし。

リカや亜美は女の子らしいから、傷を付けさせたくないってこと?

なんて失礼なヤツ!


皆が笑う中、ふいに視線を感じてぱっと左隣を振り向くと、リカが何やら不満げな顔であたしを見ている。

えっ、何で?

あたしは今バカにされたも同然なのに。


ギョッとしたものの、リカはぷいとすぐに前を向いて笑顔を見せる。

何だったんだと思いつつ、再び笑って話し始める二人を眺めて、あたしは小さく息を吐き出した。


柳はあたしのことなんて女として見てないんだろうな。

なんか悔しいし、ちょっと虚しい……

ってだから、こんな意地悪なヤツに何言われたって気にする必要ないんだって!


心の中で自分につっこみながら、もう冷めてしまったアップルティーをぐいっと喉に流し込んだ。




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