悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~
食べかけのサンドイッチを置いたあたしは、リカの背中をぽんぽんと叩いて明るく慰める。


「きっとさ、アイツとは縁がなかったんだよ。リカならすぐ他にいい人が見付かるって!」

「……当然よ」


……あら?

俯いてハンカチで涙を拭っていたリカから低い声が聞こえて、あたしの言葉にうんうんと頷いていた亜美共々ギョッとした。

ぱっと顔を上げた彼女は、怒ったような顔でこう言い放つ。


「大崎くんよりもっともっとイイ男を掴まえてやるわ。今回は私が目利きを誤っただけなんだから! だいたい私、そんなにバンドも興味ないし。よかったわ、これで」


えぇ~~。

目利きって。あんなにキャーキャー言ってたくせに、バンドも興味ないって。

超ポジティブなのか、ヤケになっているのかわからないけど、ずいぶんな物言いだ……。

まぁ、たぶん強がってるだけなんだろうから、あまり引っ掛からないでおくけれど。


「もうどうでもいいわ、大崎くんなんて!」と怒りながら、遅いランチを食べに向かうリカ。


「落ち込んでるかと思ったけど、結構タフだね……」

「あれでこそリカだよ」


微妙な気分でリカを見送るあたし達は。

彼女の嵐のような恋は、これで終わったものと思っていた。




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